2000年2月27日

東京都知事 石原慎太郎様

日暮里富士見坂を守る会

拝啓

 都議会も始まりお忙しいことと存じます。石原都知事の就任以来、今まで以上に都政への関心を呼ぴ覚ましてくださったことにお礼申し上げます。
 本日は荒川l区西日暮里にあります「日暮里富士見坂」の眺望について提言いたしたくFAXをお送りいたします。

 日暮里富土見坂は23区内で唯一富士山の全貌が足元から眺めることのできる貴重な場所です。都心には16の富士見坂と呼ばれる坂道があり、どこもかつては富士山眺望の名所でした。しかし、昭和40年頃よりつぎつぎと地上より富士山を眺められる場所は消滅し、日暮里富士見坂は最後の場所になってしまいました。この冬も寒く澄んだ空気に誘われて、日暮里富士見坂には「東京の富士」を眺めるたくさんの人が訪れています。
 日暮里富士見坂を起点にした細く閉じた眺望ラインは、研究者によってすでに詳しく報告されています。調査によれぱ、この眺望ラインの内側で高層の予想される本郷通りで5〜6宅地巾分、不忍通りで2〜3宅地巾分が7〜8階以下で、白山通りでは12階以下で建設されれば丹沢連山から上にそぴえる富士山の姿はほぼ保全されることが明らかにされました。富士山からの水平距離はおよそ102キロメートルありますが、この壮大な眺望を保全するのに必要な範囲が以外に狭いことがわかります。
 ところが昨年末、この日暮里富士見坂からの眺望ラインの内側にある本郷通り沿い(文京区本駒込3-1-1)に、13階建てのワンルームマンション(敷地242平方メートル)の建設工事が始まっていることがわかりました(事業主:日本鋼管不動産株式会社 事業総額12億円)。

 1997年12月に公布された「東京都景観条例」第4章では歴史的景観の保全を謳っています。景観計画においても「富士山の眺望」が位置付けられております。また、東京都の主催で行なわれた1996年(平成8年度)の「東京都都市景観コンテスト」では、日暮里富士見坂から望む夕日の沈む富士山の風景が特別賞(第1位 この景観をいつまでも賞)をいただきました。
 こうした東京都自らが保全したいとする景観に対し、建設中の建物の高さを抑える、具体的な制度がないことはとても残念でなりません。

 私たちはビル建設の事実を知った直後より「日暮里富士見坂を守る会」 (1999年12月27日に発足、賛同者約2600名−2月23日現在) を結成し、マスコミをはじめ各方面に働きかけてまいりました。また建築主である日本鋼管不動産株式会社との話し合いも行なっております。しかし窓口である担当者は、規制のないのは行政の問題であるとし、事業者としてはこの案件が予定どおり完成することのみを意図しており、階数を減らすことでの損額を4億5千万円と提示しております。日暮里富士見坂を守る会では今回の事業に対し、富士眺望保全に与し、企業イメージの転換と位置付けて、実質損額と社会貢献に対しての広告を天秤にかけてもらえるよう交渉しておりますが、まったく噛み合っておりません。(昨年改正された建築基準法で、階数を減らすことで失った容積率を隣接する敷地に移転できる、連担建築物制度の適用も考えられます。)

 そこで、都知事にお願いいたします。
 ただちに、日本鋼管不動産株式会社、親会社である日本鋼管株式会社に対し、「日暮里富士見坂の眺望保全」について誠意ある回答を行うように、申し入れてください。
 そのために、東京都、日暮里富士見坂を守る会、日本鋼管不勒産株式会社、日本鋼管株式会社の責任者での話し合いの場を設定してください。

建築主:日本鋼管不動産株式会社 代表取締役 池田雄一 様
〒101-0054 千代田区神田錦町 2-11
TEL. 03-3219-0561

親会社:日本鋼管株式会社 代表取締役社長 下垣内洋一 様
〒100-0005 千代田区丸の内 1-1-2
TEL. 03-3212-7111

こうしたなかでも工事は進んでおり、3月下旬には8階を越える鉄骨が立ち上がる予定です。ぜひ、早急に取り組んでくださいますよう、お願い申し上げます。

日暮里富士見坂を守る会
(代表小川幸男 : 荒川区西日暮里5丁目町会長)

*なお、資料として現況・13階が立ち上がった場合・9階が立ち上がった場合、それぞれのシミュレーション、東京都の景観コンテストの受賞写真を送信します。また、知事宛には別途詳しい資料を送付いたしました。


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