平成12年2月15日

日暮里富士見坂からの富士山の眺望保全に関する陳情書

文京区長様

【陳情理由】
 古くから富土山は高さが日本一というだけでなく、その美しい姿とともにわが国を象徴する山として愛されてきました。葛飾北斎、歌川広重などの浮世絵には、私たちの先人が愛した江戸市中から望む富士山をみることができます。富士は信仰の対象になり、富士山へ行けない町人たちの愛惜が富士塚をつくりました。富士の眺望を楽しめる代表的な場所は、富士見町、富士見坂と名付けられ、今も地域で親しまれております。都心部には現住18の富士塚と、16の富士見坂があります。文京区内には3カ所の富士塚と、4カ所の富士見坂があり、この数は23区で第一位です。

 しかし残念ながら、現在も本当に富士山が望めるのは文京区護国寺の富士見坂(右側稜線の一部のみ)と、荒川区西日暮里の富士見坂の2つですが、富士の稜線が左右とも美しく望める正真正銘の富士見坂は、日暮里富士見坂だけになってしまいました。そして、この貴重な日暮里富士見坂の眺望を支えているのはわが文京区なのです。

 ところが昨年10月、この最後の富士見坂の眺望を遮る形で、本郷通り(文京区本駒込3丁目1の1)に13階建ワンルーム分譲マンションの建設(事業主:日本鋼管不動産株式会社 事業総額12憶円)が着工しました。このビルの敷地規模は70坪ほどと小さく、富士見坂の眺望を研究保全しようとするグループも事前に計画を知ることはできませんでした。

 日暮里富士見坂を起点にした細く閉じた扇型の眺望軸は、研究者によってすでに詳しく報告されています。調査によれば、この本郷通りでは9階建ならば富士山の稜線が見え、眺望は保全されます。保全に必要な範囲も5〜6宅巾分です。白山通りは13〜4階のマンションならば問題はなく,不忍通りでも8階までならば問題ありません。富士山からの水平距離は102キロメートルありますが、この壮大な眺望を保全するのに必要な範囲は以外にも狭いのです。

 文京区では昨年12月に「文京区景観条例」が公布されました。「第1条」には、 「区民等及び事業者が協働の下に区の貴重な景観資源である「坂」と「緑」と「史跡」を生かした個性豊かな魅力ある景観づくりを推進すること」とあり、文京区の心意気が頼もしく感じられます。
 しかし、公布まもないためもあり、未だ具体的施策の不備は否めません。

 今回の本郷通りのビル建設を機に、学者・住民・富士見坂に関心を持つ方々を中心に「日暮里富士見坂を守る会」がつくられ、建築主である日本鋼管不動産株式会社との話し合いが続いています。1月末に行われた「富士見坂眺望緊急イベント」には、4日間という短い間に1044名の賛同者の署名が寄せられました。
 しかし、こうした景観(「風景の遺産」ともいうべき大きなものです)を守ることは住民だけでは出来ません。その活動を支援する行政の力が不可欠です。

 日暮里富士見坂が荒川区に所在するものだということが、文京区の働きかけを鈍らせていると思いたくはありません。唯一となった富士見坂を守ることは、私たちが文京区の財産として持つ4つの富士見坂の保全・再生につながると考えるからです。荒川区議会では今議会において「日暮里富士見坂からの眺望を守ることを東京都及び関係機関に働きかける陳情書」を全員一致で採択しました。どうぞ、日暮里富士見坂の眺望を、荒川・文京、そして広く東京の財産と位置付けてください。

 日暮里富士見坂の眺望を保全するために、以下について陳情いたします。

【陳情事項】
1.現在建設中のビルに対し、富士見坂からの眺望を阻害しない高さへの変更を可能にする施策を講じること
2.今後、富士見坂からの眺望を区の景観資源とし、その保全を目的とす施策を明文化すること。
3.日暮里富士見坂からの眺望保全を東京都及び関係機関に働きかけること。

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