2000年6月30日に開催された東京都景観審議会計画部会の議事録のうち、 富士見坂関連箇所のみ紹介いたします。
【事務局(上田公園緑地課長)】
次は、日暮里の富士見坂の眺望の件でございます。これは何度か新聞にも載りましたので、ご承知の方はいらっしゃるかと思いますが、別紙10の裏面をやはりごらんいただきたいと存じますが、日暮里の駅からちょっと西側に上りますと細い路地がございまして、そこのところから富士見坂という箇所がございます。図の右の上のほうに富士見坂がありまして、そこから、事業地と書いてあるところがございますけれども、ここのところに建つ建物が表側の写真のように、その富士見坂から見たところで写真がございますけれども、富士山が、実はこんなに大きく写っているわけではございませんけれども、遠くからこういうふうに見えて、そこに建物がたつと富士山の左側の稜線を切ってしまうということで、これを何とかしてほしいというのが陳情でございました。私どもといたしましは、何ともならないよとお話をしたわけでございますが、「日暮里富士見坂を守る会」という形が結成されまして、地元の荒川区、それから台東区を挟んで文京区、建物が建つのは文京区でございますが、そちらのほうにも陳情をされた。それから、東京都の副知事に対しても陳情をされまして、何とかなりませんかというお話をされたわけでございますが、私どもといたしましては、現在の法律の状況では、これは何ともいたしかねますと。ただ、5月24日でございますが、世論の趨勢が転換すれぱ、制度の改正も可能ではないかというふうに考えますというご返事を差し上げておるところでございます。ちなみに、その後、一番最後にございますが、署名5,818名という署名がなされて、私どものほうに手渡されております。以上でございます。
【進士部会長】はい。先ほど北沢委員がおっしゃったアセスの事前に届出を受理するということとも関連するんですが、この2件は景観条例をつくるときから、こういうことは起こるだろうということは想定された話なんですね。景観条例が無力なのかという話にもなることでもありますし、景観条例が一体どれだけお役に立てるのか、都民の期待と、逆に一方ではやり過ぎというご批判もあるわけで、その辺の非常に難しいバランスの問題もあるんですが、今事務局もこういうことで一生懸命やっているつもりだけど、そして規定どおりやっていると、こうやって怒られるという話ですね。都民から言えぱ、景観条例ができたら、こういうことが起こらないだろうと思って期待していたわけでしょうから、そういう人たちからは裏切られたと、こういうわけですよね。 事業者から言えぱ、逆に景観条例をさっき言ったように先取りして、そこで届出をしたのだからという話になる。みんな大体想像できた話なんですが、北沢委員が一番いいね、行政経験があるから。バランス感覚があるから、どうぞいいアイデアを。解決策を。 【北沢委員】解決策があれぱ、特許を取れますよ。 これ、ちょっと事実関係をまず聞きたいんですが、別紙10の富士見坂のほうは、これは景観条例の届出が必要なんですか、必要でないんですか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】まず、一般地域でございますので、高さが60メーター以上又は延べ面積3万uであれぱ届出は必要でございますけれども、これは高さ38メーター、延べ面積も3万u未満ですので、必要ございません。 【北沢委員】制度的には問題ないんですね。 【進士部会長】理想論で言えぱ、富士見坂がもうここが1つと言ったかな。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】そうです。 【進士部会長】ですから、今回の新しい都市計画法じゃないけれど、スポット的にそこはコントロールできるよという制度がほんとは要るんだと思う。このぐらいでかい都市ではね。だから富士見坂は、もう都民共通の財産だと、富士見坂からの眺望は守ろうと、こう決めれぱ、スポットでそこを指定して、そこの視野だけはコントロールしてしまうと。その権利はほかへ移動するというのはね。そういう制度でもやらないと。 【北沢委員】どこでしたっけ、倉敷でしたっけ、あの背景条例は。やっぱりこういう光景とか、西村委員が詳しいんですけど、やっばり眺望というのはかなり貴重品になってきましたよね。 【進士部会長】後楽園のあれもそうだ。 【北沢委員】だから、歴史景観部会のほうで、一応、歴史的建造物の周辺については、緩やかですけれども、そういうのをかけようという……。 【進士部会長】歴史景観部会で、そう言えば、富士山への眺望というのは指定できるかね、あれ。富士見坂。 【西村委員】眺望点が史跡かなんかになっていないと、それとまた、100メートルですからね。眺望という観点が今のところないですね。 【北沢委員】でも、歴史景観部会でも随分、陣内氏とか、神楽坂とか、坂の話を、そういう周辺のね。なさってたね。 【進士部会長】そう、何とかって言ったね。 【北沢委員】そのものじゃなくても、そういう歴史的な意味合いがあるとかいうのは、できないという話もあった。 【進士部会長】まあね、普通の常識だと、これだけ巨大な大東京が、たったこれだけの景観が守れないのかというのは、情けないようにも思うんですけどね。 【西村委員】眺望に関しては、これから徐々に守るというところが出てくるんじゃないかと思うんですよ。今、都道府県のレベルでは青森県の条例だけがふるさと眺望点というのを持っているんですね。ただ、どこも指定されてないからこれからですけど、市町村ではもうかなりいろいろ出てきています。 【進士部会長】盛岡の岩手山なんかもそうだったよね。 【西村委員】盛岡が一番きちんとまとめられていましてね、あれは岩手公園の中から岩手山のほう、それから南のほう、それから開運橋の上から岩手山、もう1カ所かな、4カ所ぐらいに関して高さ規制がかかってるんですよ。これは条例で規定していて、驚くベきことなんですけれども、岩手公園から岩手山が見えるといってもごく一部分なんですよね。県の建物とが建っていて、見えるところに関して農林会館かなんかの駐車場を避けて建てさせて眺望を守ったんですけどね。現在、高い建物が建っている裏側も規制しているんですよ、信じられないけど。みんな一応守っているんですね。つまり、今岩手山は見えないんですよ。目の前に高いのが建って、しかし、これはまずい、将来建て替えるときには低くして、そのときには見えるようにということで、裏まで頼んで、裏も一応今のところオーケーして守ってるんですよね、驚くべきことだけど。 【進士部会長】盛岡市がやれて、何で大東京都がやれないのかというのは……。 【西村委員】盛岡だからやれるか。(笑) しかし、そういう感じでやれてきてますし、世界的に見ると、やれてるところは非常に多いんですよ。アメリカの都市なんかほとんどどこも、キャピトルの塔が見えるとかね、山が見えるとか……。 【進士部会長】ドームが見えるとかね。 【西村委員】そこに関して、かなり細かい斜線制限をかけてるんで、パリなんかも地区内で50カ所近くこういうことを守ってるんですね。 【進士部会長】知事もね、こういうの1つぐらいやったほうがずっといいと思うね。評価が高くなると思うね。 【北沢委員】話題性もありますしね。 【進士部会長】話題性もあるよね。とにかく6,000人署名したんだから。 【北沢委員】6,000票取れます。 【進士部会長】6,000票取れる。ただ、そういう制度をやっぱり提案していくしかないということじゃないかな。 【北沢委員】どのくらいこういうのがあるのかよくわかりませんけれども、そんなには認知されてね、みんなだれしも、ここからのこういう光景というんで、わかってる場所というのはそんなにはもうないわけでしょう、多分。 【西村委員】せめて、富士見坂から見える富士山ですから、ある意味で非常に土地の意味もありますよね。今非常に公的な眺望に意味があって、パプリックなとこから見えて由緒があるんだというところを少し、例えば、きちんとマップして、一体どうなのかって、そこに関してどれぐらい、ほんとに見えるのかとかいうことで基本的な情報を集めていく、ちょっと悠長ですけどね、それも今のところないわけですよね。潮見坂からほんとに潮が見えるのかとかいうあたりをね。 【進士部会長】坂そのものについては、何か生活文化局か何かでやったんじゃなかったかね。「東京の坂」とかって何か冊子まであったんじゃない? 【事務局(勝田地域計画部長)】 ありましたね。これは陳情者の言い分ですが、「富士見坂」と呼ばれている東京の坂から実際に富士山が見えるのは、この坂が最後だというふうにおっしゃっているんですよ。我々もそれはちょっと立証できないんですけれども、現場は行ってきました。それから、ここの事業者とは何度か折衝しまして、こういうことを言っているから何とかならないんですかということはやりました。やりましたが、やはり事業者のほうは、もうぎりぎりの事業採算の中でやっているので、言い分は、よく意味はわかるけれども勘弁してくれ、できない、会社がつぶれちゃいますと、こういうふうに言われました。それ以上、やはりなかなか追い詰められないという感じですよね。 【進士部会長】まあ、そういうことを言われると、どうしようもないんですよね。だから、以前、向島百花園の隣のマンションは、公園緑地部で買ったんですよね、樋渡委員。 【樋渡委員】そうです。 【進士部会長】ああいうふうに公有地化してくれるといいんですけれどね。 【樋渡委員】そうですね。 【進士部会長】ここは文京区ですか。 【事務局(勝田地域計画部長)】建設場所は文京区です。 【進士部会長】じゃ、文京区が買ってくれれば……。 【事務局(勝田地域計画部長)】坂のあるのは荒川区ですね。 【進士部会長】相当高いものだろうね。 【事務局(勝田地域計画部長)】直線距離で1.3キロぐらい離れているところです。 【進士部会長】このビル、幾らですか、土地代は。 【事務局(勝田地域計画部長)】何億って言ったかな、あれ、そのとき出たんですよ。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】3階分だけでも低くしてくれというお願いをして、それで3億円だと言われたんですね、たしか。 【進士部会長】3階分が。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】ですから、全部買うとすると、もう既に発注して建て始めているので、それも全部含めると大変な金額になるという話をされました。今回のところだけを解決いたしましても、実は裏側の地図を見ますと、不忍通りというのがございます。それから、本郷通りと、そこは全部、商業地域でございますので、ここのところに全部高い建物が、それぞれ、この1軒だけではなくて、3宅地分ぐらいずつ高い建物が建つ可能性があるわけですので、それを担保するためには、ここの位置を全部何かしなけれぱならないということで、二の足といいますか、大変難しいということがございました。 【北沢委員】倉敷は一応損失補償を条例で……。 【西村委員】地役権を設定して、その分を買い取ったような形で……。 【北沢委員】買い取りましてね。そういう例もありますね。東京都、財政難ということですが。多分、実際にも倉敷でも、買い取った例なんてそんなにないんでしょう。 【進士部会長】だから、その空中権を都有地で13号埋立地の一部をあげるとか交換できるとかそういうふうにならないのかね。 【西村委員】容積の移転制度といいますからね。そのためにもこのピューコリドーはその容積移転の対象になるとかね。 【進士部会長】どこでもやると、それは混乱するけど、そういう最低限ね。 【西村委員】今のところ、歴史的な建造物とか、同じような評価でこういうところもやってるんですね。 【進士部会長】これこそ、ほんとは昭和の初めに全部高度制限かけておけば、こういうことなかったんだけど。 【樋渡委員】点々の建物の横にマンション建ってますね。今度これ建ちますね。すると、いいよということになると、このまた横に建ちますね。結局、全部見えなくなっちゃうんですね。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】そうです。これはまだ遠いほうですので、その手前の不忍通りに建てれぱ、もっとまた見えなくなる。低いものでも見えなくなる。実はその図面の下がこの地形図なんですね。へこんでいるこの本郷通り、それから不忍通り、不忍通りは比較的低いので、割合高いものが建っても、ただ、富士見坂が位置が低いものですから、30メーターぐらいの高さのものが建っても大丈夫だとか、これは住民の方が調べて来たものです。それぞれ千川通り、白山通りとか、ずうっと書いてございますけれども、遠くにいけば、かなり高いものが建っても影響はないので、影響があるのはこの本郷通りと不忍通りであるという、この守る会がつくった資料でございます。 【進士部会長】今、景観担当としては、この要望書に対してどう答えたのか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】お答えしたのは、5月24日の、現条例上ではできません、ただ、景観の世論の趨勢が変われば今後検討は可能です、というご返事をしてございます。 【進士部会長】この世論の趨勢って何ですか。 【事務局(上田l公園緑地計画課長)】例えぱ新聞とかですね、やはりそういうものも、もっと変えるべきであるとかいう話が大きくなれぱという、法制度まで変わるという状況。 【事務局(勝田地域計画部長)】法制度として、こういった眺望のそのサイト、何て言うんですかね、制度として確保すると、それに対する何らかの補償なり担保を、これも法制度でできるというようなことの全体的な世論が、私権の制限をされてもいいよ、そういうためには、というようなことが形成されれば可能性がないということではないんじゃないかというふうに考えていますが、いきなりそういうところへは、なかなか日本の場合はレベルとしてはいかない状況にあるということだと思っているんですけど。 【西村委員】そうだと思うんですけど、世界的な流れは、やっぱりかなりそういう権利が認められていく方向だと思うんですね。うちの学生が世界各国の憲法に景観の権利がどれくらいうたわれているかというのを調べたんですが、ものすごくうたわれているんですよ。うたわれているほうが多いんですね。30とか40はもう見つけてきて、それは風景を守るとかですね、その周辺とマッチした景観を保全する義務があるみたいな。 【進士部会長】憲法に? 【西村委員】憲法に書いてあるわけです。そして、それがふえているんですね。だから、逆に、ちゃんと頑張ってくださいと。都としてもそういうことだと思うんですよね。先ほど言ったように、盛岡みたいにやれているところもあるから、そういうところに最終的には権限をね。 【進士部会長】審議会の中の世論じゃだめなんだね、これは。 【北沢委員】審議会は、そもそも世論を反映した制度じゃないじゃないですか。これ、ちょっと法制度上では、全文じゃないでしょうけど、法制度上では、私有財産権の一部を規制する条例等の整備は困難というのは、ちょっとこれは言い過ぎというか、事実そういう規制をしている条例もありますから。 【進士部会長】今のこの条例もそうね。ただ、今のように、これがおさえられないという意味だよね。制限はしてる。全部頭からつくらせられないというふうにはできないという意味であって、制限はしてるんだよね。 【樋渡委員】盛岡の例というのは、私は知らないんですけれども、その山を見せるということによって、盛岡の観光とかなんとかいうものにダイレクトに結ぴつく話なんですか。例えばパリのサクレクールの高さがありますね。あれ、完全にあれ切っちゃったらパリは名物なくなっちゃうわけです、1つね。そういう意味はあるんですか。 【西村委員】盛岡の景観で、岩手山というのは盛岡の人にとってシンボルだし、岩手公園は盛岡城址ですからね。そういう意味ではシンボルですからね。 【樋渡委員】そういう精神的な意味でコントロールなんですか。それとも何か実利的な意味で……。 【西村委員】ガイドラインがあって高さが……。 【樋渡委員】それ、切っちゃうと市の観光上、非常に問題が起こるとか……。 【進士部会長】いや、そんな実利はないですよ。 【樋渡委員】精神的に……。 【西村委員】それは経済的にダメージはあるというような言い方をするでしょうけど。 【進士部会長】わんこそぱ屋が並んでたり、あの川沿いに。だけど、それじゃないよね。やっぱり精神的なものですよね。 【西村委員】ただ、規制しているところは、一番都心の商業地区ですからね、建てようと思えぱ建てられるんですけどね。 【北沢委員】僕も横浜にいたとき、横浜の山手の「港の見える丘公園」からの眺望規制というのやってたんですよ、20メーター。山の下、商業地域でもです。もちろん1つは観光というのは横浜の顔なんだという言い方はあるんですが、実際に、見える光景というのは余りきれいじゃないんですよ。単なる港湾が見えるだけ。でも、やっぱりそれは1つの横浜の精神的なシンボルになるというので、割と納得をみんなしていたと思うんですよ。 【西村委員】要綱で守られているわけでしょう、今でも。 【北沢委員】基本的に守られていますね。それはそれぞれ個々の案件では相当もめますけれども。財産権は確かに非常にシビアな問題かもしれないですけども、やってできない話ではないと思います。 【進士部会長】だからね、さっきのように埋立地なんかに結構、都有地はあるわけですよね。いや、そんなこと言ったらみんなそっちへ引っ越していくけど。ただ、東京都が何もできないというのもちょっと情ないね、これ。いや、これ、結局、景観条例そのものへの不信感なんですよね。都民はやっぱり期待しているわけですよね、こういうことには署名が集まるということ、そのものがね。だから、いや、これは今の条例じゃできませんと言っといていいのかどうかなんだね。何らかのアクション、それは今の検討会をやるとか、都市計画中央審議会でもこういう議論を私はしましたよ。出しましたよ、意見を。せっかく都心の再開発や何だというときに、その話ぱっかりしないでこういうこともやってくれって大分言ったんですけどね、もう担当者は、今回の改正でこれをやろうと決めているものだから、ほかのいろんなこと言えないんだよね。だけども、こういうことをもうちょっと本気で議論する仕掛けをつくっておかないと、いつまでもフラストレーションが都民の中にたまってしまうと。業者のほうも、いつもこういうことでやられて、手数がかかるということになって、お互いさまなんだな、これ、損するの。だから、やっぱり空中権の移転みたいなものね、特定の例外でもいいから都は何らかの措置ができると。歴史的建造物は、それでも一応、部分的に支出するようにしているわけだからね。 【西村委員】アメリカの例だと、このある程度の部分を、ある地区に指定して、こっちに飛ばせということをやっているところがあるんですね。やってしまう。多分、臨海と結ぴつけたら、かなり荒唐無稽ですけどね、ただ、臨海の側の理屈から言うと、あそこにこう何かいいものをつくることが、既成市街地の改善にどれくらい役立つかという議論がありますよね。そのときに、こういうことであれぱ景観が守られるから、その意味で既成市街地も守られているんだと。だから両方よくなるとかね、何かうまい理屈づけの球にでもなれぱいいと思うんですけれどもね。 【樋渡委員】こういう問題、どんどん出てくると思うんですよ。それを都市計画局と都民との間でやっている限り、全部、水面下の話で一般の人、知らなくなっちゃうですよね。もし、取り組むというと、水面の上へ出す方法を考えないといけないんですね。 【進士部会長】そうですね。 【樋渡委員】例えぱ「美しい東京を守る会」、あれを都民会議でもって討論会をやるとかね、何とか言って、こういう問題は一体どうやるんだという、共通理解をどうやって求めるんだというところをやらない限り、同じ話じゃないですかね、こっちもね。 【進士部会長】例の文化財庭園の協議会だって、十何年も前から言ってたんですね。それで例の向島百花園がそのとき浮上したんですよね。 【西村委員】例えば、この会は今議事録は公開されているんでしたっけ。この会自体は公開されていないんでしたつけ。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】公開です。 【西村委員】公開ですか。例えぱ、ここでこういう議題を扱うということを割とわかるように、例えぱ記者クラブかなんかに、流しておいて、ここで議論をしているのを聞いてもらうだけでも、これはかなり世論的には大きいと思うんですよね。もし、公開だというんであればね。 【北沢委員】富士見反の件について、これそのものを審議するというわけにもいかないでしょうけれども、この眺望の問題については、審議会なりこの部会の1つの検討事項として……。 【進士部会長】そうそう。眺望景観をどう扱うかね、地べたのその土地の中だけじゃなくて、眺望というのをどうするかというのは大問題ですね。 【北沢委員】それは1つの、これをきっかけにして、審議事項として今後検討していくということはできないんですかね。もちろん財産権のこと、さっきの空中権の移転も含めて、少し幅広く……。 【進士部会長】それは恐らく、さっきの景観基本軸として、この辺全体をやるときにも必ずそれが出てくるわけですから、それに対して事前に手を打つということですよね。 【西村委員】財産権の問題を言うんだったら、こういう問題は一番、その意味では何か規制をする理屈を立てるとすれば立てやすいわけです。ほかはもっと苦しいわけですからね。だから、その意味で眺望権、眺望の問題を何らかの形で議論するというのは、自治体レベルでは結構出てきてるんですね。小田原もやってるし、富士宮もやってるし。 【樋渡委員】このビルが立ったときの写真を撮って、六大紙に一面広告やって、あなたはどう考えるとやっただけでもずいぶん違う。金をどこが出すかは別にしてね。やっぱり水面の上に出さない限り、常に担当者等が苦労なさるだけになっちゃう。 【進士部会長】京都の京都ホテルだか何だか忘れたけど、あれでもそうですし、かなり、それをやる前から議論が起こるんですけどね。こっちは工事が始まってからいつもなるものだからね。 きょうはそのくらいにしましょうかね。今、眺望景観について一体どう考えていくのかと。今まで全部、接地的に、地べたでしか物を考えていませんからね。もともと景観条例の議論のときに眺望景観をいつも議論したわけですけれどもね。それから、江戸名所図絵でも江戸名所百景でも、みんな江戸図は全部富士が入っているわけでね。ですからそれは東京の景観を考えるときに、富士への眺望というのは大前提なんですよね。ただ、それが従来の都市計画行攻は土地に絡んできたものだから、できてないんですね。さっきの高度制限なんかもほとんど生かしてないし、制度的になくはないわけですよね、本当は。それをやらないだけなんですよね。それをやらないというのは、世論が言わないというんだけど、世論は、といっても世論なんですね、これだけ。だけど、まだ熟してないというふうに判断しているわけで、いや、熟していると西村委員は今判断したわけで……。 【西村委員】熟しつつある。 【進士部会長】それは、東京都がどのくらいリードするかということだと、東京都のリーダーシツプ、全国的に見たときにね、そういう観点も必要だと思いますから、少しこれは機会を見て、ぜひ設定していただけれぱと思います。 もう1つ別紙9のほうも、当事者は大変苦労しているわけで、その辺についてのコメントがありましたら、あるいはアドバイスがありましたら、ちょっと伺って、終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。 【北沢委員】非常に消極的な言い方ですが、現行の中でやるとすると、やっぱりこの届出のタイミングというのがすごく難しいですよね。あくまでもこれは一般基準としてチェックというか調整をさせていただいているわけで、あるいはその景観基本軸のところは川から見たこれだけであるから、景観全体についていいと言ってるわけではないんですね。そういう一般的なチェックであって、その地域的な特性を把握して条例上チェックしているわけじゃない。そこに、そもそもこの制度の限界があるわけですよね。だから、その事業者に対しても、要するにこれがチェックされたら景観全部オーケーと言っているわけではない。その場所においての景観性とか、そういうことを配慮しなきゃいかんということは明確にやっぱり言っておく必要があるんじゃないかと。それは、ちよっと消極的な意見ですが、最低限それはやらなければいけない。 【進士部会長】私、ちょっとこの間も申し上げたんだけど、例えば学会で論文を受理するときに、規定審査と内容の審査をやりますね。この論文は学術論文として正しいかという前に、一応サマリーがついてるかとか、データの表のつくり方はこうだとかという、それは規定審査ですよね。私は、これは、規定審査を受かってるということだと思うんですよ、東京都が認めたというのは。事前相談をやって規定審査をやったと。もし、こういうことで異論が出てきたら、この内容についても異論がなきゃ規定審査をやって大体内容を満たしているんだからいいということになるんだろうけれども、異論があるということは、それが絶対正しいかどうかは別として、内容的に問題があるという見解が出ているわけですよね、ある市民から。だから、それを受け止めて再審査というのも変だけど、規定審査から今度は内容の審査に移ったというふうに理解すれば、もう一回議論はやれるんではないかというような気もするんですね、手続のやり方次第ですけれども。 それから、もう1つは、根本的には事前協議でやるというルールを、ほかの区なんかでもそうなんですが、事前にこういう一般基準とかいろいろ基準があって、それと事前協議をやってオーケーというふうにやってくるわけですが、私はどうも、そういうやり方が徒労に終わりやすい。つまり、後でこういうことがすぐ起こってくるものですから、なるたけ早く情報を出して、異議ある人と直接事業者とやらせてしまって、そういうことがなくなったときにオーケーというのは、役所としては非常にいいんじゃないか、こういう気もしなくはないんですね。だから、情報公開の仕方というか、こういう案件がここで起こってるよというのを、どういう手続でオープンにしていくかということを少しルール化する原案をつくっていただいたらどうかと。 【北沢委員】都の例の紛争予防条例の手続と景観の条例の手続と、どういう前後関係になってるんでしょうか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】こちらのほうが早いんです。少なくとも30日前に届け出てくださいということになってますので、それを変えるべきではないと思います。 【進士部会長】景観の話は一番早くしないとね。 【事務局(勝田地域計画部長)】紛争予防条例のほうは、どちらかというと相隣問題なんですね、日影とか、あるいはそれによる居住環境が悪化するとか、そういうものが主で、それで議論されるんです。それはある程度定量的な物差しがありますから、規定上このぐらいなんですよと。少し色つけてカットしたから、これでもうしようがないんじゃないですかというようなことがあるんですが、こちらに来るのは、それが根っこにずっとあるんですが、それでも不十分だということを、ある意味で景観という形に形を変えまして、問題があるというふうにくるもんですから、単純な景観という側面と、それから相隣問題で残っているそのまだ、不十分、不満があるというところとの2つが我々のところに来まして、今度は事業者になりかわって我々が住民と相対して弁解これ努めると、こういう立場に追い込まれるという感じなんですよね。 【事務局(勝田地域計画部長)】情報がいつ往民に行くかという話で、多分、紛争予防条例によるのが初めてになるんですよね。それで話が前後してしまって、矢表に立つのが景観の話、こういう図式になっちゃう。 【進士部会長】この構造は何とか早く変えないと、何だか変ですよ、やっぱりね。事業者が本来対応すべきですよ、これ。だから、一種の行政が許可したんだからというと、今度大義名分ができちゃうわけでね。行政は推奨しているわけじゃないんですよね。一応ぎりぎりのところのミニマムを押さえさせる努カはしましたというだけなんですよ。だから、検査済証があるからといって優秀品だよと言っているわけじゃないんですよね。 【麻生委員】何か1つの方向性といいますか、例えば色でそろえていくとか、デザインをそろえるとか、そういう指導型の基準みたいなものが必要じゃないか。 【進士部会長】だから一般基準に書いてある。一般地域はこれに書いてある。 【麻生委員】例えぱ玉川上水に沿ったところはこういうデザインにしていくとか。 【進士部会長】玉川上水は景観基本軸があるから、そこでやってるでしょう。 【麻生委員】ただ、もうちょっと細かいレベルで、建物のデザインとかそういう……。 【進士部会長】そこはね、さっき地域計画部長がおっしゃったように、景観という言葉でさまざまな不満というか、住民としてのフラストレーションをやっぱり表現をしてるんですよね。本当はあんなところマンション嫌だというのもみんな含んでいるわけですよね。それが高過ぎると言い方に言葉を変えているだけだったりするものだから、高さが何階といったらそれでいいとかという話じゃないんですよね。それは、先ほども言うように、これからは住民の意見を大事にするというのが常識になっているわけです、都市計画一般で。だから、住民が先にまずその情報を受け止めて議論して、事業者とやり合って、両方納得したところで出してくるというような構造にしないと、事業者みたいになっちゃうんですよ、東京都は。 【事務局(勝田地域計画部長)】そうなんですね。、 【進士部会長】区もそうなんですよ。区の審議会なんかみんなそう。区の担当者もみんな審議会の委員に怒られてかわいそうに。 【北沢委員】私もこちらの立場になってよかったですよ。これ、でも、受理をもうちょっとおくらすというのは、条例を改正しなきゃだめなんですか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】規則を変えていけぱよろしいかと思います。たしかあの規則をつくっていたときは、てきるだけ早く指導をすべきであるという趣旨で、どんどんどんどん、できるだけ早くという意識でもってつくられてしまったわけですね。実際に何もそこまでやらなくても、実際に事前相談さえ早く来れぱ、届出行為そのものは、ある程度まとまった時点でいいじゃないかということになり得るかなというふうに最近は思い始めております。 【進士部会長】少なくとも届出を受理したということは、何か許可みたいなふうにとるという、ここの整理をしたほうがいいですね。 【樋渡委員】それはね、出すほうとすれば、場合によっては、そういうふうになるかもわかりませんけど、実際やっている窓口の方も、許認可の受理とそれから協議誘導型の受理と同じものだと考えちゃう恐れが僕はあると思うんですね。 【進士部会長】そうそう、混乱してるかもしれないね。 【樋渡委員】そうすると、許認可のですと、さあっとやって、よし、するといえぱ、これ拒否できない。だから受け止めちゃうんですね。受理は一番最後にやって、その間の誘導をどうするかというのが一番重要だという形態でしょう。そうすると先ほど北沢委員がおっしゃったように、情報公開の協議に、こういうとこに入りましたよという情報から出さないとだめなんですけど、それは出てないわけですよね、今。その義務もないし、そうやるということも言ってないわけなんですよね。だから、それをやらない限りだめなんですよね。何回やった結果、こういう調整をしましたというのを、届出はおかしいじゃないかと言ったときに、説明できれぱいいんですよね。 【事務局(勝田地域計画部長)】そうですね。我々もちょっと勉強しましたので、今、樋渡委員がおっしゃったようなことは、少しプロセスとして情報をまとめて、何度か住民の人とやりとりするときには、そういう説明はして、役所として最大限努力したというものは示そうというふうにはしてるんですが、部会長おっしゃったとおり、ともかく、すべての不満を形を変えて、ともかく景観にというふうにくるものですから、根本的に建ててもらいたくないというところまである部分である話がこうきちゃいますから、どんな説明をしても満足しないというのがかなり強いですね。反対するときには、このケースはそうでもないと思いますが、運動としてやってくる方なんかがいるんですよね。そうすると、もう全く接点がないということもありますので、かなり試行錯誤しながら、少し整備していかなくちゃいけないなというふうに思っております。 【樋渡委員】何かそこでちょっとポイントを切り替えることによって、行攻と反対派の人たちと、業者も踏まえた三角関係へ持っていくようなポイントの切り替えというのをどこかでできないですかね。 【事務局(勝田地域計画部長)】そうですね。それをしないといけないと思います。我々はいつの時点からか何となく事業者の代弁者みたいな立場に立たされちゃいましてね。 【樋渡委員】もう2対2、1対1になっちゃったの。それを三角にしてボールの投げ合いをやる方法つくらないとね。 【進士部会長】私は、三角の、行攻の1点は薄めて、2者でやってもらうように持ってったほうがいいと思う。事業者と住民でやんなさいと。近隣の了承印を持ってこいというような感じの話にしていかないと。それだと、その場所性、相当考えないと近隣の同意が得られないと。結構、そういうコミュニティの規制カみたいなものでね、まあまあ、予定調和的にいい線いく可能性があると、そのときに、行政は何もしていないかというと、こういう基準を示して、一般的な最低限の常識はここまでは来てるんですよということは示せると。事業者もそれを頭に、幾ら何でもあなた方は反対運動の運動論としてやり過ぎだよと。都としては、このぐらいがスタンダードだと出しているじゃないですかと。我々はこれを十分に満たした上に、さらにここまてはやってんだからお認めくださいよという話になって、私は、ほどのいいところでおさまるという期待をしてるわけですよ。それが生半可、公的な、つまり行政が関与することで、逆に一方にお墨付きを与えた形になってしまって、非常にややこしくなると。その結果、何が問題かというと、いま言ったように東京都の景観条例とか、景観行政とかに不信感が出てしまう。私は、一番大きな景観をよくする原動カというのは、やはり都民の意識だと思いますよ。それが変な方向へベクトルが、行政は何やってるんだみたいな話になってみたりしてしまう。あるいは、こんなものは無カだというふうになってしまうというのは一番怖いと思うんです。だから、できるだけ当事者同士が話し合ういう路線にしていったほうがいいんじゃないか。 【西村委員】先ほど紛争予防条例ででね、あれは高さの2倍でしたよね、あそことうまく関連づけられないのですかね。環境アセスとだって、景観の施策調整が変わるでしょう。何かうまくその中にこれを入れて、そこでの結果が、この届出書の受理につながるんじゃなくて、この言ってる受理というのは、事前相談の第1段階の受理になる。たしか、京都の風致もかなり細かい規制をやってんですけど、あれは第1段階の受理と最終的な書面の受理というのが2段階からなってるんですね。そういうふうにして、コミュニティ側で判こもらってきてくれと、それがあったらこれも認めるという……。 【進士部会長】それこそコミュニティの人たちと話し合う前の段階、まず、1回、一応見ましたよというね、やって。本当の受理じゃないんだよということのね。まあ、その辺、大分こうやって現実にいろいろと言われてみて、これじゃ、まずいだろうとお考えでしょうから。 【事務局(勝田地域計画部長)】いろいろ勉強してきます。 【進士部会長】行攻的にうまくいくように幾つか提案していただいて、整理されたらまた部会でご議論いたしましょうか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】もう1点、先ほどのアセス対象の関係でございますけれども、この場合ですと、かなり大きな案件になるわけですね。そのような大きな案件につきましても、この審議会なりのご意見をいただかないで、そのまま我々行政が景観に問題ないとして、アセス審議会のほうに流れてしまうシステムになっているんですね。やはり少なくとも、アセスに流れるような大きな案件については、これだけの規模の計画部会ではちょっと無理でしょうけれども、例えぱ歴史景観部会のほうでつくられているように、何人かの委員の方に、そこをお見せして、一応ご意見を伺うというシステムをつくりませんと、やはり景観という大きなものを扱うこの手続からすると、やはりそういうシステムに変えなけれぱならないのかなという感じはしてございますけれども。 【進士部会長】そういう上田さんのご意見には何か異論がございますか。 まあ、それはそうでしょうね。それもあんまり煩瑣にならないでやれる手だてを考えたほうがいいですね。 【西村委員】ただ、アセスのほうで景観のときに出す図面て、そんなにどこかから特定の地点から見て……。 【進士部会長】モンタージュじゃない。 【事務局(勝田地域計画部長)】モンタージュとかそういう感じですね。 【西村委員】あんまりきちんとしたと言ってはいけないけど、ほかの項目に比べると、すごく簡単ですよね。だから、どれぐらいの議論がそこでかみ合うかというのも……。 【進士部会長】今までのはモンタージュの作成法とか、視点の選ぴ方とか、そういうことを大体点検しているんでしょう。ただ、今みたいなこういう話になってくると、そういう話じゃないんですよね。だから、機械的な話よりは、住民の問題なんですよね。それこそ、そこの場所性にふさわしいかどうかとか、それこそデザインにコメントがあってもいいですね、さっき麻生委員が言ったように。 【西村委員】今のご提案は、アセスにかかるような案件は、景観の部分に関しては、ここにかかるということですか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】アセスにかけなければならないような案件については、やはりここの審議会も多少ご報告するようなシステムに変えなけれぱならないのかなというふうに考えております。 【西村委員】景観審議会の役割とか何か書いてありましたっけ、景観に係わる何とかかんとかというのは、一般的に、審議会の役割として。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】ございません。 【進士部会長】その他、知事が希望があればやれますね。だから、それはそこを使えば……。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】その受け皿はないわけでございますね。そうしたものについて。軸を決めるか、方針を決めるか、あとは歴史的景観の建物にするかだけですから……。 【西村委員】景観に非常に影響を及ぽすような特定行為の中でも、特にそういうものに関して何か……。 【進士部会長】それは意見を聞けることにはなってるでしょう。だから、そういう意見を求めたいと、そちらが出せぱやれるんじゃないですか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】ただ、そうしますと、審議会に一々お諮りしていかなくちゃいけない、そうすると年何回しか開けない。 【進士部会長】そうじゃなくて審議会に一括して、そういうことがあったときには、だれだれとだれだれにチェックしてもらうということにしておきたいんですけどというのは了解とっておけばいいんじゃないですか。 【事務局(上田公園緑地計画課長)】そういうこともちょっと検討させていただきたいと思います。 【西村委員】それも先ほどの公開という話で、公開できるんであれぱ、そこのところで公開して、バーッとマスコミとか、反対の方々にも全体を聞いていただいたりして世論を動かしていく。 【進士部会長】もしよろしけれぱこのぐらいで終わりたいんですが、よろしいでしょうか。 それじゃ、大変有益なお話をいただきましたので、事務局で少しいろいろ議論していただいて、また考えください。 【事務局(勝田地域計画部長)】ありがとうございました。 【進士部会長】景観基本軸のほうでも、きょうの話は大変ですが、少し考えておいていただいて、調整を図りたいと思います。どうもありがとうございました。 16時09分 閉会 |